粘菌生活 第7回

お待たせしました! “粘菌生活”復活です!!

今回のテーマは”本屋さんと図書館”です。

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粘菌生活 第7回   本屋さんと図書館

今日も目が覚める。
気温が急に下がったので、腰が痛い。
起き上がるのも、やっと。
それでも、動ける。
ありがたい。

5年前、引っ越しを機に、テレビを捨てた。
15年くらい前に、新聞の定期購読をやめた。

朝起きたら、戸を開けて空を見上げる。
天気予報は、自分の身体で。
頭の手術をして以来、お天気の変化に、身体が敏感に反応する。
出かけるのも、お天気次第。

今話題になっていることは、電車の中づり広告で十分。
インターネットで、毎日見るのは、お天気情報と友人、知人が関わる情報サイト、ツイッター、ブログ。

公の情報であれば、ほぼ90%がインターネットを通して入手できる。
だから、学校なんかいかなくていい、という声がある。
本当にそうなのか?

神奈川県の鎌倉図書館のツイッターが話題になっている。
学校に行くのがつらいなら、学校を休んで図書館にいらっしゃいと。

あとから気づいたのだが、私は、小学校4年生から6年生まで、同級生にいやがらせをされていた。
上履きの中に砂が入っていた。
ランドセルや上履きが、外に放りだされていた。
私の使った箒は「わー、気持ち悪い」と言って放り投げられた。

上履きを逆さにして砂を出し、上履きを履いた。
学校の裏庭に放りだされていたランドセルを探しだし、泥を払って背負った。
放り投げられた箒を拾って、掃除用具入れにしまった。

なぜこんなことをされるのか、なんて一度も考えたことはなかった。
「だから、どうだっていうの?」
そう思わせてくれたのは、本の中にいる多くの友達だった。
毎月一回配本される「少年少女世界の名作文学」。
「若草物語」「小公女」「小公子」「秘密の花園」「ファーブル昆虫記」「少年駅伝夫」「岩窟王」・・・・・

私が生まれた村には、本屋がなかった。
本屋のある町まで、今なら、車で10分ほどの距離だが、当時は、バスで30~40分かかったような気がする。
ある日父が、勤め先の学校に近い町の本屋へ一緒に行き、「つけ」で本を買えるようにしてくれた。
今でいう、料金一括後払いである。

おかげで、本好きに拍車がかかった。
週に一度、ピアノを習いに町へ出るたびに、好きな本が手に入る。
「嵐が丘」「風と共に去りぬ」「ファーブル昆虫記」と手あたり次第である。
「赤毛のアン」シリーズのおしゃれなスミレ色の箱は、今でもなつかしい。

たび重なる入院のお伴は、再販された文庫版「赤毛のアン」シリーズ。
赤毛のアンは、60歳を超えた今でも私に寄り添ってくれる親友である。
本を開くたびに、10歳の私がキャーキャー喜んでいる。

「赤毛のアン」には意地悪な同級生が出てくる。
後ろから赤毛を引っ張った意地悪な男のコ、ギルバートとアンは結婚することになる。
ギルバートはアンが好きだったのだ。

そう、そう。
男のコってそういうもんよ。
好きって言えないから、意地悪してアピールする。
わけわかんない。

でも、今なら男のコのわけのわからなさが分かる。
黒々とした心が、どの人にもあることも分かる。
むろん、自分にもね。
同時に、暗闇を照らす希望という力があることも分かる。
いろいろ分かるから、足を引きずっても、腰が曲がっても、年取った方が面白い。

息子が生まれて、一緒に本屋へ行くようになった。
どっちにしようかな、と決めかねている律儀な息子。
本屋にいる限り、この母は太っ腹である。
「両方いいよ」
ぱっと笑顔が広がる。
2~3千円でこの笑顔。
本はすごい。

50年たって、町の本屋さんは姿を消した。
子どもが歩いて行ける場所に、本屋さんはもうない。
そうだ。
図書館があるじゃないか。
学校にも、図書館はある。
ずらっと並んだ本の中に、あなただけに、おいでおいでをしている本が、きっとある。
触ってめくれば、きっと分かる。

どうか、どうか、この現実だけがすべてだと思わないでほしい。
時空を超えた世界があることを知ってほしい。
その手掛かりは、紙でできた本。
本の中にも、あなたの一生に寄り添う親友がいる。
おじいさんも、おばあさんも、そのまたおじいさんも、おばあさんもみんな、黒々とした心と共に、困難を生き、一筋の希望をつないできた。
そして、今、あなたや私がいる。
希望という人類の大きな宝物が、どうかあなたにも届きますように。